【生活費の25倍では危険?】FIREを目指す日本人が知るべき『4%ルール』のリスク

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4パーセントルールのリスク-アイキャッチ
目次

4%ルールとは

FIRE達成の目標額を決める際に、一般的に用いられるのが「4%ルール」です。
「4%ルール」は、トリニティ大学が過去の米国市場データを用いて行ったシミュレーション結果に基づいています。

具体的には、米国株式75%、米国債券25%で構成されたポートフォリオから、リタイア時の保有資産の4%を毎年定額で取り崩した場合、98%の確率で30年以上資産が尽きることなく生活できることが示されました。
この4%の根拠は、米国株式や米国債券を保有することで期待される年利7%からインフレ率3%を差し引いて算出されたものです。
この研究結果が「4%ルール」と呼ばれる由来となっています。

つまり、「4%ルール」に従えば、年間支出額の25倍に相当する資産を形成することで、労働収入に頼らず、資産の取り崩しのみで生活できるフルFIREを達成できる、という考え方です。

例:1億円分の米国株や債券などの資産を保有している場合、4%ルールに従い、毎年400万円を取り崩して生活すれば、インフレ率を考慮しても98%の確率で資産が枯渇することなく生活を維持できます。

4%ルールに潜むリスク

ただし、4%ルールには以下のようなリスクがあり、必ずしも安全な方法とは言えません。

為替リスク

4%ルールは米国を対象とした研究結果であり、米ドルでの引き出しを前提としています。
一方、日本で生活する場合は円で資産を引き出すことになるため、円高が続くと資産の価値が目減りし、4%の定額で取り崩す場合には、想定よりも早く資産を使い果たすリスクがあります。
また、定額ではなく、毎年の円建て資産額の4%を定率で取り崩す方法を選ぶと、資産の減少スピードを抑えられる一方で、円高時には引き出せる額が目減りするリスクがあります。

インフレリスク

物価の上昇の原因によっては、物価の上昇に対して資産の利回り(株価の上昇)が追いつかない可能性があります。
この場合、4%の定額で現金を引き出しても、購買力が低下し、生活水準を維持できなくなる可能性があります。

インフレが株価を押し上げるケース
  • 企業収益の増加:
    物価上昇に伴い、企業の製品やサービスの価格も上昇し、売上高が増加します。
    これにより、企業の収益が増加し、株価が上昇する可能性があります。
  • 実質金利の低下:
    インフレ率が上昇すると、名目金利は上昇する傾向がありますが、実質金利(名目金利-インフレ率)は低下する可能性があります。
    実質金利が低下すると、株式投資の魅力が増し、株価が上昇する可能性があります。
インフレが株価を抑制するケース
  • 金利上昇
    インフレを抑えるために中央銀行が金利を引き上げると、企業の資金調達コストが増加し、株価が下落する可能性があります。
  • 消費者の購買意欲低下
    物価上昇により、消費者の購買意欲が低下し、企業の業績が悪化し、株価が下落する可能性があります。
  • インフレ率の変動幅
    インフレ率が急激に上昇すると、経済全体に不確実性が高まり、投資家心理が冷え込み、株価が下落する可能性があります。

税制改正リスク

2024年現在、金融資産の売却益や利子、配当にかかる日本の金融所得の課税率は 20.315% です。
ただし、将来的に税制改正が行われ、税率が引き上げられるリスクがあります。

日本に居住する人が特に4%ルールで注意すべき点

4%ルールはアメリカを対象にした研究結果であるため、日本の税制や社会保障制度は一切考慮されていません。
そのため、FIRE後に日本で生活する場合、特に税金と社会保障費に注意を払う必要があります。
日本では、金融資産の売却や配当金の受け取りには税金が課されます。
また、FIREを達成し会社員を辞めた後も、所得に応じて国民健康保険料や国民年金保険料を支払う必要があります。

そのため、単純に「4%ルールだから年間生活費の25倍を貯めればFIREできる」と考えると、実際には十分な生活費を得られない可能性があります。

具体例:1億円を貯めてリタイアした場合

1億円の資産から4%ルールに従って400万円を取り崩す際の影響をシミュレーションしてみましょう。

  • 株式売却と税金
    • 株式を400万円分売却した場合、その譲渡益に20.315%の税金が課されます。
      • 取得金額が200万円、譲渡益が200万円の場合:
        • 譲渡益税引き後:159万3,700円
        • 取得金額+税引き後譲渡益:200万円 + 159万3,700円=359万3,700円
  • 社会保険料の支払い
    • 国民健康保険料:82,100円/年
      • ※保険料は年齢や所得、居住地域によって異なります。
        今回は40~64歳、加入人数1人で計算。
        NISA口座や特定口座から資産を取り崩す場合、確定申告の必要がないため、他に収入がない前提、つまり所得ゼロの扱いの場合の保険料を使用しています。
    • 国民年金保険料:203,760円/年
      • ※所得に応じて免除が可能
  • 最終的に手元に残る資金
    359万3,700円-(82,100円+203,760円)=330万7,840円

このように、最終的に手元に残る金額は約330万円となり、4%の400万円から大きく減少します。

それぞれの資産額に応じて、手元に残る金額を大まかにシミュレーションした結果がこちらです。

スクロールできます
資産額4%ルールで取り崩す額金融取引にかかる税金社会保険料手元に残る金額
120,000,0004,800,000-487,560-285,8604,026,580
110,000,0004,400,000-446,930-285,8603,667,210
100,000,0004,000,000-406,300-285,8603,307,840
90,000,0003,600,000-365,670-285,8602,948,470
80,000,0003,200,000-325,040-285,8602,589,100
  • 4%で取り崩した額の50%が譲渡益にあたる前提。
  • 社会保険料は所得ゼロの扱いの場合の国民健康保険料と国民年金保険料の合計。

年間400万円の手取りを得るためには、ざっくり1億2千万円の資産が必要という計算になるなんてびっくりですね。
生活費や娯楽費をかなり抑えない限り、フルFIREよりも、部分的に働いて生活費を補うサイドFIREの方が現実的かもしれません。

結論:生活費の25倍ではフルFIRE達成は難しい場合も

例えば、生活費が年400万円かかる場合、25倍の1億円を貯めればFIREできると単純に考えると、税金や社会保障費の影響で資金不足に陥る可能性があります。
そのため、4%ルールを鵜呑みにせず、日本の税制や社会保障費を考慮して目標額を立てることが重要です。

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